審査レポート - 日本コカ・コーラ

日本コカ・コーラからのミッション

自販機を活用し、
毎日がちょっとずつハッピーになる
“コカ・コーラさわやか大作戦”を展開せよ!

インターンに取り組んだ8チームからの提案は、「ハッピー」をゲーム性を持って人々に届ける企画から、社会的な課題に正面から切り込んだ企画まで幅広い作品が出揃った。それ故、審査は困難を極めるものであったが、各チームが捉えた「ハッピー」とはどのようなものか、98万台のコカ・コーラの自販機の可能性をいかに見出しているか、また大作戦と呼ぶにふさわしい提案かという点で審査が行われた。

日本コカ・コーラ賞に輝いたのは東京都市大学付属高校の「チームM」。
「ちょっとずつ」なのに「大作戦」という、相容れないように思えるミッションの意図を絶妙に捉えた作品であった。彼らはコカ・コーラの既存事業について分析し、すでに「飲むこと」によって人々をリフレッシュさせたり、ホッとした気持ちにさせていると指摘。そこで「ただ買って飲む」だけを提供するのではなく、「買うこと」も楽しめるようにしたいと主張。「僕らの地上絵~世界遺産登録へ~」という作品タイトルの通り、ある順番に則って自販機を回って飲み物を買っていくと、一つの地上絵が浮き上がるという企画を提案。彼ら自身も渋谷の街を実際に歩き、自販機をマッピングして図形を浮き上がらせた。「チームM」が考えるハッピー(疲れた人を癒やし、活気を与える)を実現するために、日常的な行為にちょっとした仕掛を加え、今までと全く違った景色を見せる体験へと変えてしまうという、コロンブスの卵のような発想であった。

トップバッターを務めたのは、お揃いのコカ・コーラのトレーナーを着て登場した法政大学高等学校の「Coca-yuco」チーム。私たちのまわりにはハッピーが溢れているにも関わらず、それを実感できていない人が多いと指摘。これを打破するために、恵まれない国の人たちにハッピーを届ける「ハッピープレゼントコンテスト」を考案。ハッピーを届けたい国をイメージして自販機を飾り付け、その収益を寄付するという。このようにして、自分がハッピーに気づき、周囲と分かち合い、他人が喜ぶ姿を見て改めて自分自身もハッピーを実感できるプラスの循環を生み出そうという提案であった。また、コカ・コーラのキャンペーンの認知度が低いことも指摘。その改善策として、コンテストを行う学校の放送室をジャックして、学生へ認知度を高めるという案も盛り込まれていた。
明るく元気な雰囲気、分析力の高さ、指摘の鋭さに審査委員一同驚かされた。もう一歩踏み込んで、ハッピーのプラスの循環がどのように広まって、最終的に自分のハッピーの再認識につながっていくのか描き出せるとさらに良かった。

会場を一番盛り上げたのは埼玉県立新座総合技術高校の「Winner」チーム。今の日本において、男女の結婚願望は高いにも関わらず婚姻件数が下がっているのは、出会う場所と時間がないと指摘。この現状を打開するために、自販機を活用して人と人が自然と出会えるきっかけをつくり出す「Coca Meetオンライン.com」を提案。具体的には、飲み物を購入した際に自販機にスマートフォンをかざすと音楽の半分がダウンロードされ、もう半分を持った人とすれ違うと知らせてくれるというもの。飲み物の購入から出会うまでを再現した寸劇は非常に手が込んでいて、会場中が引きこまれた。どのチームよりも会場を沸かせたのが「Winner」チームであったが、だからこそ、その楽しさに加えて、この提案によって出会いがどのくらい増えるのかということや結婚願望から婚姻にまでどのように発展していくかなど、自分たちの問題提起に立ち戻って論理的に説得できるとなおよかった。

身近な活動にこれまでにない付加価値を生み出したのがクラーク記念国際高等学校千葉キャンパスの「ビクトリーズ」チーム。「E-ハッピープロジェクト」と名付けられた企画は、Electricity(電気)・Everybody(みんな)・Enjoyment(喜び・楽しみ)の頭文字をとったもの。まちの清掃活動と共にハート型の実がなる「ハートツリー(花言葉:小さな幸せ)」を子どもたちと植樹していくことで、みんなで楽しみや喜びを共有していこうという企画。単に街を綺麗にするだけではなく、自然体験が豊富な子どもは「意欲・関心」「共生感」「人間関係能力」が高まるという調査結果を用いて、子どもたちの感性や能力を育てる機会にしようという意欲溢れる提案であった。また、この活動の資金は自販機で太陽光発電した電力を売ってまかなっていくという点も秀逸であった。まちの至るところにハートツリーが植えられている様子をイメージするだけでハッピーになれる提案であったので、それで社会全体が具体的にどのように変わっていくのか、もう一段ダイナミックさが加わるとなおよかった。

会場の共感と感動を呼んだのが渋谷教育学園渋谷中学校の「なにぬねのぐち」チーム。さまざまな悩みや葛藤で不安を感じたり躊躇している人の背中を押し、一歩踏み出す勇気を与えてくれる「PUSH YOUR BACK」という自販機を提案。「喧嘩した友達に謝りにいく前」「大好きな人への告白前」などに「PUSH YOUR BACK」の両手型のボタンを押すと、その人を応援してくれる商品が出てくるというもの。ハッピーになる瞬間について深いところまで探求したことがよく伝わってきた。プレゼンテーションの方法もニュース番組仕立てにしたり、パラパラ漫画のCMを作ったりと手の込んだものであった。多くの人の共感を得るコンセプトであったので、自販機でこれまでとは違った価値を提供するということに、もう一押しの説得力があるとよかった。

行動力に秀でていたのは三重県立松阪商業高等学校の「MOMO柄」チーム。自販機にモニターを設置し、その地域の情報を発信するという提案であった。顔認証機能を用いて、使う人にあった言語や情報を自販機が自動的に判断できるようにするという。松阪商業高校の近くにある世界的な観光地、伊勢神宮を例に上げ、実際に自分たちでまちを散策し、伊勢うどん・メンチカツコロッケが美味しい店や、有名なお土産を探し上げていた。コンセプトを言及するだけで終わることなく、実際に行動し自分たちの目で見たものを伝えようという行動力には驚かされた。また観光地ならではのアイディアとして、自販機で飲料を買う際に、その缶に記念写真を印刷できるサービスを提案。記念として残るだけでなくポイ捨てが減るという指摘には納得であった。企業審査委員からも「面白い、本当にやってみたい。」という意見が出ていた。さらに、大作戦としてどのように発展させていこうとしているのか「MOMO柄」チームの意見を聞いてみたかった。

息の揃ったプレゼンで会場を魅了したのが長野県上田千曲高等学校「ベンジャミン・フランクリン」チーム。「HAPPY HAPPY あなたと大切な人の記念日をカウントダウンしちゃいます企画」はハピポカード(ICカード)に大切な記念日を登録すると様々なサプライズが起こるという提案。例えば、ハピポカードに友人の誕生日のメッセージを登録しておくと、レジや自販機の支払いの際にそのメッセージが表示されたり、オリジナルラベルの飲料が出てきたりする。技術的にも実現可能性が高く、人々にハッピーを届けられる素敵な提案であった。また、話の節目で「ハッピー」と声を揃え繰り返し伝えるプレゼンテーションは、審査委員のハートをわし掴みにした。後半でオリンピックとの連携やコカ・コーラのグローバル性を活かした提案が盛り込まれていたが、前半とのつながりが見えづらかったのがもったいなかった。

「毎日がちょっとずつハッピーになる」ことを「日々健康になっていくこと」と捉えた千葉商科大学付属高等学校の「進撃のコーラ」チーム。社会的な課題とコカ・コーラの自販機を上手く結びつけた完成度の高い提案であった。現代病の多くが気づきにくい病であるが故に、早期発見が重要。しかし病院に行くには、時間と費用、ストレスがかかるという理由で足が遠のいてしまっていると指摘。そこで自販機に手を入れて、爪の状態や血圧によって気軽に健康診断を行える「Easy Health Check」を考案。その結果はスマートフォンで簡単に管理でき、医師からも専門的なアドバイスを受けることができる。また、日常生活の中で健康改善ができるような飲み物の提案を自販機が行うという点も秀逸であった。自販機を核に病院やジムなど多様な団体を巻き込もうという提案は革新的であり、全体的に深い探求が見られ審査委員をうならせるものであった。

すべてのチームの「ハッピー」が満開に咲き誇り、中高生の発想の豊かさに感心させられ続けたファーストステージとなった。この提案に至るまでに苦しいことや笑顔になれない日もあったと思うが、最後までミッションに対してポジティブな姿勢で向き合い、全チームが笑顔でプレゼンしてくれたことを、大変嬉しく思うと同時に心から敬意を表したい。これから先どんな壁にぶつかろうとも、この精神を大切に世界へ羽ばたいていってもらいたいと願っている。

「企業プレゼンテーション」部門 ファーストステージ審査委員
赤石 麻実

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主催:クエストカップ実行委員会 / 教育と探求社

協賛:クレディセゾン / スカパーJSAT / ソフトバンクグループ / 大和ハウス工業 / テーブルマーク / 日本コカ・コーラ

協力:一橋大学イノベーション研究センター / 法政大学キャリアデザイン学部

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