未来へとタスキをつなぐ
人工衛星を活用した
“生活ど真ん中サービス”を提案せよ!
スカパーJSATに提案した8チームは、どのチームもパイオニア精神のある思い切ったチャレンジがみられた。調査力や論理性、表現力も高く、 “生活ど真ん中サービス”というテーマに対して、自分たちならではの発想を生かしながら全身全霊を傾けた探求の足跡が随所に感じられた。
名城大学附属高等学校の「杏秋ノ綾。」チーム。
自分たちの身近に起きた辛い体験から「同じ思いをする人を減らしたい」と「杏秋ノ綾。」チームが一丸となって考え抜いたことは、ほんとうに素晴らしい探求だった。
GPSの効果的な使い方を考えるに止まらず、交通事故の防止という目的のために人工衛星のGPSがどのように生かせるのかと考える発想からは、
より良い世界の実現のために事業やテクノロジーがあるという深い洞察が感じられた。人工衛星の市場が行き詰まる現状を指摘しながら、娯楽に止まらず、
「命を守る」という新たな事業領域をスカパーJSATに提案する姿勢は、未来をつくる若者らしい伸びやかさが感じられた。
東京都立芦花高等学校の「うさことうさおの7日間」チーム。
「うさことうさおの7日間」チームは、記憶を映像化していつでも再生できるサービスがあれば、この世界はどのように変わるのかという革新的な問いかけからはじまる提案。初出場ながら難題に真正面から取り組み大胆にやり遂げた。
実現可能性の検証では、脳の中にある映像を外部に取り出す最先端の研究事例などもしっかりと調査されていた。宇宙空間にある人工衛星と人類のこれまでの発展の歴史を見つめた探求はスケールが大きく、彼らの提案は人々の記憶に鮮やかに残った。
立命館宇治高等学校の「M³H」チーム。
3人の男子生徒「M³H」チームの発表には、聞く者を勇気づけるような素朴で力強い説得力があった。科学技術の進歩の歴史をたどり、最先端の技術までを包括した視点で、宇宙太陽光発電や宇宙からの送電を描いた論理性と構想力は見事だった。彼らが描く未来では、充電という概念がなく、スカパーJSATはエネルギー産業に進出し、エネルギー革命を実現している。自らの未来に対するビジョンが企業への革新的な提案となり、「未来へとタスキをつなぐ」素晴らしいプレゼンテーションとなった。
佐久長聖中学校の「Team Rainbow」。
“生活ど真ん中”とは「睡眠」であるという斬新なアイディアが、初出場の中学生チームから出たことは大きな驚きだった。確かに眠りに対する現代人の悩みは切実であり、質の高い睡眠は社会的な課題のひとつだ。ブルーライトなどの睡眠障害のメカニズムもきちんと調査されていた。しっかり眠ることが出来て、起きたら元気に活動が出来る「快眠促進チャンネル」は、既存の娯楽の範囲にとどまらない革新的な提案。提案者と視聴者に分かれたやり取りで問題を解決していく発表のスタイルは
7人のチームワークあふれる工夫に満ちたもので「Team Rainbow」らしい楽しい雰囲気を発表会場内につくり出した。
常翔学園高等学校の「丑三寅三」チーム。
「丑三寅三」チームは、メンバーそれぞれの個性を生かした豊かな表現力があり、常翔学園高校らしい生き生きとしたプレゼンテーションだった。携帯電話を“生活ど真ん中”に位置付けて、現代社会の人間関係の問題、一緒にいても孤独な状態を「みんなぼっち」と呼び、その解決に新衛星「きずな」による「Life in TV Service」を提案した。立体ホログラムで仮想のペットとの交流を楽しめる「Pets Phone Service」を企画。携帯電話の黎明期からの歴史やイリジウム携帯、「IsatPhone」などを踏まえ、海外や国内の最先端技術まで探求した力作だった。
京都産業大学附属高等学校の「エッグサテライト」チーム。
「エッグサテライト」チームは、人工衛星のリモートセンシング技術に着目し、有機野菜栽培の事業「スカパー農業課」を提案した。スカパーJSATと農業の組み合わせは大変ユニークなアイディア。日本の食糧自給率の問題や有機野菜栽培を実践する川上村の農業などを調査し、人工衛星の種類と機能を丁寧に調査して最適な人工衛星を選び出した。農業用地の探索や農業の情報化などを多面的に計画するとともに、他の野菜との差別化を図り、人工衛星の利用でのコスト上昇のデメリットをニッチ市場でカバーする販売計画も的確だった。
埼玉県立岩槻商業高等学校の「スカパーJr. 」チーム。
「スカパーJr.」チームは、人間の転送という現代の科学技術では実現できそうもない夢のようなテーマに取り組んだ。このテーマで挫折せずに最後までやり抜いたことは賞賛に値する。将来ワープが実現すれば、交通や輸送、CO2削減などに劇的な変化をもたらすという説明にもどこかユーモアがあり楽しい発表となった。もし、ワープが実現すればスカパーJSATのみならず、全人類に影響を及ぼす壮大な計画。ワープのためのデータ化方式が、アニメの中の技術で説明されたことは分かりやすかったが、実現への一歩となる検証のためには今後のさらなる探求を期待する。
桜丘高等学校の「Pizza-Sat」チーム。
「Pizza-Sat」チームは、全ての人に関係する電気を“生活ど真ん中”のテーマとして選び、宇宙太陽光発電を「降り注ぐ」というキーワードで圧倒的な説得力をもって提案した。従来の宇宙太陽光発電の変電所を経由して電線で供給されるという仕組みを革新し、人工衛星から電気製品に直接送電する方式に変えるというもの。人体への影響など課題は多いとしながらも、パイオニア精神を標榜するスカパーJSATこそが挑戦すべきであると詰めよった。キャラクターやアニメ、吹き替えを駆使し、最初から最後まで見る人の気持ちを引き込んだ。豊かな表現力と考え抜かれた構成、そしてメンバーの堂々としたプレゼンテーションには降り注ぐエネルギーがあふれていた。
スカパーJSATの企業賞は、桜丘高等学校の「Pizza-Sat」チームだ。彼らの作品が選ばれた理由は、宇宙太陽光発電という他にもありそうなアイディアを「降り注ぐ」という言葉で最後まで描き切った説得力と、論理的であり同時にエンタテインメント性の高い構成力・表現力にある。キャラクターやイラストなどの作品のつくり込みをはじめ、吹き替えの質の高さ、発表の堂々とした態度など、センスとエネルギーにあふれたプレゼンテーションに審査委員全員一致での選出となった。
最後まで選に残ったのは、東京都立芦花高等学校の「うさことうさおの7日間」チーム。「記憶の映像化」は、スカパーJSATの事業にふさわしい“生活ど真ん中”のテーマ。人工衛星から最先端の研究までを網羅した探求力と伸び伸びしたプレゼンテーションが評価された。
また、「人間の転送」という人智を超えた提案をやり抜いた埼玉県立岩槻商業高等学校「スカパーJr.」、「命を守る」という交通事故防止の新事業を提案した名城大学附属高等学校「杏秋ノ綾。」、シンプルなプレゼンテーションで「宇宙太陽光発電」を提案した立命館宇治高等学校「M³H」のチームにも複数の審査委員から推薦の声が上がった。
スカパーJSATの全てのチームには、既成概念にとらわれないチャレンジがあった。当日、彼らの発表を聞いた人々は、年齢や性別、立場を超えて、躍動感溢れるパイオニア精神に触れることが出来たのではないだろうか。生徒たちが自ら考え、創造性の翼を羽ばたかせて企業とともに描く未来は、どれをとっても輝きに満ちていた。スポーツも芸術も学びも働くことも、自分らしく探求する上では全てが創造的な活動だといえる。自分らしさや創造性を抑えたり縛ったりする必要はなく、伸び伸びとさせることで私たちの未来はもっと輝く。「クエストカップ」や「クエストエデュケーションプログラム」を体験した生徒や先生、企業人のみなさんは、日々の活動においても自分らしく伸び伸びとしたチャレンジを続け、周囲の人々にも肯定的な影響を与えて欲しいと切に願います。
「企業プレゼンテーション」部門 ファーストステージ審査委員
山田 義博