当日の審査を振り返って
各チームとも、表現方法にはオリジナルの工夫がみられた。
紙芝居や寸劇、テレビ番組風やクイズを盛り込むものなど、
取り上げた人物の足跡を丁寧に伝えようとする熱意が感じられる作品ばかりであった。
グランプリに輝いたのは滝川第二中学校で、作家の田辺聖子を
取り上げた「田辺children」 チーム。本と共に生きた
田辺聖子の人生を、寸劇を交えながら豊かに表現した。
主人公の田辺聖子を演じた女子生徒の演技力はすばらしく、
また脇を固める登場人物たちもそれぞれの役を見事に演じきり、
聴衆を引き込むものであった。わかりやすい構成、
ぶれないテーマ設定、よく練られた脚本、連携のとれた
スムースな舞台回しなど、全体の完成度が高かった。
同じく、滝川第二中学校の「戦場のコックマン村上信夫」チームも
審査委員の評価は高かったが、「何を伝えたいのか?」という
テーマの絞り込みがもう一歩浅かったことが明暗を分けた。
例えば、チーム名にもしている「戦場の~」というところを
原点にして食を考える、みたいな構成はどうか、など
審査委員からも具体的なアドバイスが伝えられた。
その点、常翔啓光学園中学校の「Team Kita」は、終末期医療に
こだわる日野原重明の原点となった、患者とのストーリーを
丁寧に伝えるものだったが、逆にそこだけに終始した感もあり、
日野原の哲学や人生観の深さから見ると物足りなさも残した。
長嶋茂雄を取り上げた育英西中学校の「Long Island」チームは、
メンバーが揃いのユニフォームを着て、素振りなどのパフォーマンスも
盛り込んだ賑やかな作品。
水木しげるを取り上げた長野県上田千曲高等学校の「ミスターしげる」チームは、
BGMを使いながら、軽妙な会話を盛り込んだ楽しい作品。
どちらもチームワークよく、元気に表現してくれたが、
本当に伝えたいテーマが見えてこず、やや散漫な印象を受けた。
今年の「人物ドキュメンタリー」部門は、総じて
人物のどの部分に自分たちは感応したのか、ということについて
メンバー間での話し込みがまだ足りないような印象を受けた。
単に年表に沿って人物の歩みを紹介するだけではなく、
例え少々偏っていたとしても、自分たちのオリジナルの視点で
人物をとらえ、その人物の哲学や魅力についてチームでとことん話しあい、
表現していこうという姿勢が欲しい。今後の頑張りに期待したい。