クエストカップ2012 大会の様子
日本経済新聞社からのミッション
 日本の未来をここからつくる
 読むことで世界が変わる 10年後の日経電子版を提案せよ!

当日の審査を振り返って

7チームによる発表が行われたファーストステージ。
全てのチームが全国大会に向けて、エントリー時から作品を磨き上げてきていた。
生徒たちの力と意気込みが強く感じられる作品ばかりで、
内容や表現力、スライドの作り込みなど、それぞれにここが一番だと評価できる点があった。

その強者ばかりの中、今年度日本経済新聞社賞を獲得したのは
渋谷教育学園渋谷中学校の「桃太郎」チーム。
自己紹介で述べた「着想と論理力だけはどこにも負けません」との言葉通り、
日本経済新聞社のインターンとして高い当事者意識に立った発表を行った。
日経電子版の持つ、難しい、わかりづらいという課題から、
読者に経済を自分ごととして感じてもらうことが必要と考えた。
ユーザーが日々の生活の中で商品を購入した際、
その購買行動がどれだけの経済効果を生み出すのか瞬時に示す、
スマートフォンのアプリの提案だ。
自らが経済を動かしている一人の主体であるという実感を持つことで、
経済の動向やニュースに自動的に関心を持つようになるというプランに、
審査委員は大きく頷いていた。
発表時間が制限時間を超えてしまうというマイナス点もあったが、
着眼点と探求の深さがそれを埋めて余りあるという高い評価を得て、受賞に至った。

審査委員特別賞を受賞した麗澤高等学校「ちくわ in the sky」チームは、
10年後は今以上に情報が氾濫しているという仮説に立った企画を提案。
一つひとつのニュースの関連性を視覚的に理解できる教材を開発し、
学校の授業で使用することで、日本の学生に広い視野と能動的に情報を得る力を
身につけてもらいたいと訴えた。
審査委員からは、実際の開発チームにこのプレゼンテーションを見せたいとの声が上がるほど、
コンセプトの秀逸さとそれを具体的なサービスとしてつくり込んでいる点が高い評価を得た。

京都市立西京高等学校の「文法怪人パーズ星人」チームは、
10年後の新聞は今のように単方向のメディアでなく、双方向になるべきだと提案。
読者が直接記事を投稿出来る仕組みを作り、新聞記者の目が届かないような情報も
記事にすることで、誰もが必要な情報を得ることのできるサービスを提案した。
日経電子版をよく調べた上で詳細に考えられたサービスは、非常に説得力のあるものだった。
多くの記事を取り扱うことで、情報量が増えるので、その中から読者に最適な記事を
どのように提供していくかという仕組みまで考えられていれば、
さらに深みのある提案になるだろう。

滝川第二中学校の「TK-ZAI」チームは、2つのサービスを提案。
1つ目は今の大学生の厳しい就職活動状況や、これから10年後、
さらにフリーターが増えることに着目した、就活生と企業をつなぐアプリ。
2つ目は、世界規模で情報交換が行えるサービス。
それぞれ、キャラクターを使ったマーケティングまで考えられており、
海外の人達とコミュニケーションが取れる機能を紹介する際には、
実際にいくつかの外国語を使って実演していた。
堂々と発表する様子からは、相当なリハーサルを重ねてきたことがうかがえ、
ここまでの彼らの並々ならぬ努力の跡が感じられた。

京都産業大学附属高等学校の「T.N.Revolution」チームは、
日経を、日本の経済を知る新聞から、世界の経済を知る新聞へ変えるとのコンセプトで発表。
多くの人はテレビで報道されている程度しか世界のニュースを知らない点に注目し、
ニュースを世界地図上に表示することで、視覚的に把握でき、
能動的に世界を知る手助けになるというサービスを提案した。
また、世界の経済を良くすることで日本の経済を良くしたいという発想から、
日経電子版の料金の一部を現地の記者や社会起業家に寄付・投資することも考えられていた。
寸劇を交えた笑いで聞き手の注目を集めながら、
要所では落ち着いて丁寧に説明を行うプレゼンテーションの方法は、
聞き手に伝えることを考えぬいたもので、審査委員からの評価も高かった。

逗子開成高等学校の「H(NK)2 」チームは、
楽しさ、手軽さを追求した、いつでも・どこでも・誰でも楽しめるサービスを目指した企画を発表。
ストレス無く読める新聞の実現のために、独自端末を開発する意義を説明し、提案した。
何よりも審査委員を驚かしたのは、この自分たちでデザインしたタブレット端末や
グラフィックインターフェイスのレベルの高さ。
デザインを整えたスライドで直感的に伝え、シンプルに説明するプレゼンテーションは、
聞き手を魅了するものだった。

東京都市大学等々力中学校の「Economy Star ☆J」チームは、
「My 日経」という、今の日経電子版をより自分専用とするサービスを提案。
一般読者用、就活者用、子供用と3つのコースを用意し、
コースごとにインターフェイスやコンテンツを変えるなどのカスタマイズを可能にし、利便性を重視した。
発表では、10年後からタイムスリップしてきた人物がサービスを紹介するという寸劇を行い、
自らの企画が実際に使われている様子を、リアルに表現していた。

中学生・高校生である彼らには、中々馴染みが無い日経電子版。
それをアンケートやインタビューなどさまざまな活動を通じて、自分たちなりに理解し、
問題点を発見して解決策を探求する彼らの姿勢に頼もしさを感じた。
また、どのチームにも他のチームに負けないようなキラリと光る個性があった。
各チームは、是非それぞれのチームの良かった点を研究し、
自らの中に取り入れていくことを期待したい。

彼らはこれからも探求を続け、新しい未来を切り開くことだろう。
10年度、彼らと再会することが楽しみになる、そんなファーストステージであった。