【審査講評】
今年の「企業プレゼンテーション」部門の審査は、
例年以上に個性豊かな作品揃いで、審査は非常に厳しいものとなった。
その中で見事にグランプリに輝いたのは、
テーブルマークのミッションに取り組んだ常翔学園高校「じぇAむず」。
「孤食」という現代社会の課題を取り出し、
「食べるレストランではなく、つくるレストラン」を展開することで、
砂粒のようにばらばらになった現代人の心を繋ぎ直そうという提案だ。
企業のインターンとして大きな社会課題を捉える視点の高さ、
それを解決するための提案内容が具体的で、
今あってもおかしくないと思わせるほどのリアリティを持っていること、
そして、それを伝え切るために十分に練られたプレゼンの構成とストーリー。
どこまでもあきらめずにミッションに取り組んだ姿勢がわかる
総合力の勝利だった。
最後までグランプリを争ったのは、
クラーク記念国際高校横浜青葉キャンパス「Dreamar☆」だ。
コカ・コーラの自動販売機を使って、世界の紛争地域に埋まる
地雷を除去しようという提案。
悲惨な現実に真っ向から目を向け、身近にある自動販売機を使って
何が出来るのか、深く探求した跡がうかがえる作品だ。
150円で1㎡分の地雷が除去できるというシンプルさ、
この自動販売機ではコカ・コーラしか売らないという絞り込みのセンス、
「JMAS(日本地雷処理を支援する会)」という団体の人に
直接会いに行って取材した行動力が高く評価された。
もうひとつ高い評価を得たのが
スカパーJSATのミッションに取り組んだ渋谷教育学園渋谷中学校の
「チームKHAOS」だ。
同じく、地雷を「地球規模の課題」として取り上げ、スカパーJSATの
人工衛星を使って無人で地雷を除去していくシステムの提案だ。
このチームの驚くべきは調査力。地雷被害の現状をはじめ、
現在各分野で活用されている技術を丹念に調べ上げた上で、
それらを組み合わせて効果的に地雷を取り除いていこうというもの。
派手な演出やパフォーマンスこそないが、同校らしい骨太の提案は
すべての審査委員が賞賛するものだった。
今年初出場ながら、舞台狭しと駆け回り、聴衆の心をつかんだのは
西大和学園中学校の「Ah!Squat Ch.」、中学二年生のチームだ。
クレディセゾンからのミッション「ワクワク働く人があふれ出す革新的な
クレジットサービス」に取り組み、見事に自分たちならではの企画を
提案してくれた。
「“ワクワク働く”とは人から喜ばれ、感謝されることだ」というコンセプトに沿って、
AR(拡張現実)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)
などの新技術を使って、働く人がやる気を起こすサービスを考案した。
寸劇を交えてサービス内容を伝えていくプレゼンは
堂々としたもので、笑いもあり、とても分かりやすいものだった。
大和ハウスに提案した鷗友学園女子高校「大和家」も
同校らしい、調査力と論理性、楽しさが盛り込まれたプレゼンだった。
大和ハウスの中にすでにある技術、発熱材と断熱シートを使って
お弁当やおにぎりなどを手軽に温めるという新商品。
まさにミッションで要求された課題に対してダイレクトに応えたものだ。
実現性が高そうなのに、これまで実現されてなかったアイディアに
対する気づきは素晴らしく、インターンとしての当事者意識の高さを感じた。
初出場ながら、日本経済新聞社賞を受賞したのは
クラーク記念国際高校千葉キャンパスの「チームビクトリア」だ。
若い世代が経済に興味を持てず、自分とは関係ないものだと
思ってしまっていることに目をつけ、スマートホンのアプリを使って、
楽しみながら経済を学んでいくという提案。
身近なお買い物から、株式投資、為替などの様々な経済活動を
アプリで体験することで、経済に関する若い人たちの当事者意識を喚起する。
歌とダンスを交えたパフォーマンスは堂々としたもので聴衆の注目を集めた。
今年のミッションは、社会的課題を意識したものが多かったこともあり、
生徒たちの提案内容も社会性、公益性の高いものが多かった。
発想の豊かさや創造性、表現力は例年同様素晴らしかったが、
今年はさらに、調査力や論理的な裏付け力が向上した。
一見夢のような企画が、様々な事実や事例を提示することで、
実はそれほど夢物語ではないことを知らされたり、
逆に、すでにあってもおかしくないような普遍的な商品が
これまで見過ごされていたことに気づかされたり、
本質を突いた驚きのある提案が目立った。
自在な発想力を現実の世界へと結びつける力を身につけた
中高生たちの成長ぶりには目を見張る。
大人も子どもも関係なく、すべての世代が協力しながら
共に未来を切り拓いていく時代が正にはじまろうとしている。