人が生きる原点を支える
世界中に広まる大和ハウスの新商品を開発せよ!
【審査講評】
出場7作品はどれもレベルが非常に高く、激戦が繰り広げられた大和ハウス。
審査のポイントとなったのは、ミッションにある「生きる原点」について
どこまで深く探求し、自分たちなりの答えを導き出したのかというプロセスと、
「世界に広まる」という大きな視野を持ってプランが作りこまれているかという点であった。
見事、大和ハウス賞に輝いたのは鷗友学園女子高校の「大和家」チーム。
審査委員を「あっ」と言わせる驚きの発想と、自分たちの実際の経験に基づいた
彼女たちらしい地に足のついたプレゼンで賞を勝ち取った。
東日本大震災の時、学校から自宅に帰れず、不安でたまらない気持ちで食べた保存食。
実際に被災地へ足を運び、直接聞いた被災者の言葉。
そんな彼女たち自身の経験から沸き上がってきた、
「食事の時くらい、温かいものを食べてほっとしたい。」という切なる思い。
これが人を思いやる温もり、そして心を温める彼女たちの新商品の提案へと繋がった。
彼女たちが考え出した新商品は、大和ハウスの断熱材の技術と発熱剤を活用した、
どんな時でも食べ物が温められるホットパック「そっとあなたをあたためたい」。
「あたため隊」というキャラクターと、今時の女子高校生のかけ合いで
テンポの良いプレゼンが繰り広げられた。
彼女たちの実体験から新商品の提案に至った点、また大和ハウスの断熱材の
これまでにない応用方法には、審査委員の感動と驚きがあり、時に目頭を熱くするほどだった。
トップバッターにも関わらず、堂々としたプレゼンで会場を一気に熱したのが
法政大学高校の「チームエガワマン」。
チームエガワマンは「生きる原点」を「水」とした。
このチームが群を抜いていたのは、「水」から「節水」に注目するまでのプロセスと、
「失う前に、気づき、そして後悔したくない!」という強い思いだ。
外国からの輸入食品が多い日本は、結果的にその食品の生産の際に使われる
水の消費量も世界トップになる。そこに注目した。
さらに世界では現在も7億人が水不足に苦しんでいることを危惧し、
日本から「節水」の意識を輸出したいと考えた。
そこで、彼らが提案する新商品は節水メーター。
地味で人目に触れないメーターをどのようにして多くの人に見てもらい、
節水の意識を高めてもらうのか、考え抜いたプレゼンであった。
またアンケートなどのデータに基づき、自分たちの提案を伝え切る説得力のある
プレゼンには審査委員からも高い評価が集まった。
埼玉県立八潮南高校の「Nagakita-s」チームは「生きる原点」を「充実感」とした。
そして、趣味を通して人と繋がることで「充実感」を感じられる
アミューズメントタウンを提案。
趣味が見つけられない人にはカウンセリングでフォローし、
高齢者・若年者・外国人などそれぞれに合わせたプランを作成するなど
きめ細やかなケアができる街、その名も「IPFタウン」を考え出した。
名前の由来は、大和ハウスの創業者、石橋信夫氏の言葉「今一歩ふみこめ」の
頭文字を取ったそうだ。
「IPFタウン」を行政とタイアップし過疎化地域に作ることで街を活性化させたり、
そのノウハウを抽出し世界各地に輸出するというプランまで盛り込まれていた。
街づくりのノウハウで大和ハウスが世界に挑戦するという新規性のある企画だ。
このチームが素晴らしかったのは調査力。日本で行われている施策や世界の現状を
資料やアンケート調査などで一生懸命調べた様子がひしひしと感じられ、
審査委員も口々に素晴らしいと讃えた。
プレゼン終了後、会場がどよめくほどの圧倒的なプレゼンを行ったのは
西大和学園中学校の「西大和ハウス」。
とても中学生とは思えないプレゼンだった。
マイクなしで背筋を伸ばし、真摯に自分たちの夢を訴える姿に誰もが釘付けになっていた。
「生きる原点」を「進化」とし、リニアモーターカーの技術を応用した高速エレベーターを提案。
複雑な技術の原理をイラストや例えなどを使い、
わかりやすく伝える工夫が随所に見られた点も良かった。
何より彼らは、与えられたミッションを誰のものでもない、自分たちのものにしていた。
自分達の「宇宙」への夢をミッションに託し、それを必ず実現するという強い思いに
会場にいた誰もが感動を覚え、審査委員の心を熱くした。
「生きる原点」について非常に深く考え、メッセージ性のあるプレゼンを行った
三重県立名張高校の「大和主義国」チーム。
何も持たない生まれた時の「からっぽの状態」を通して、
世界中が「平和」になってほしいという強い思いを会場の人々へ投げかけた。
提案する新商品は大和ハウスのヒット商品ミゼットハウスを思い起こす「Empty room」。
どうしたら身分の差を超えて全ての人が「無」になって話し合いができるのか、
日本の伝統文化である茶室からヒントを得て、入り口を「にじり口」にするなど、
しっかりと骨太に考えぬかれた作品であった。
埼玉県立伊奈学園総合高校の「YAMATOの家」チームは、コンパクトな
スーツケースサイズの「折りたたみ式キッチン」を提案。
ここに至るまでのプロセスで、チーム全員が「周りの人を支えられる生き方をしたい」、
「たくさんの人に感謝して生きたい」と考えるようになったと発表。
そして誰もが安全な食事をとって生き抜いていけるように、
世界中で使えるキッチンを思いつくに至った。
さらに、途上国などでは実演販売で商品を広めるという方法まで考えられており、
審査委員からも感心の声が上がった。
実際に使ってみないとその良さは分からないという、
相手の立場に立ったPR方法も高く評価された。
構成力、演出力、探求力、そして、自分達の思い。
総合的に評価が高かった常翔学園高校の「Sustain Love」チーム。
プレゼンの質の高さに圧倒された。寸劇を取り入れながら、
過去を振り返るという難しい構成であったが、見事にやりきった。
このチームは「生きる原点」を「愛」とした。
人が生きる上で誰もが一度は受けたことのある「愛」。
その「愛」を呼び起こさせる「想い出ボックス」を使って、
世界中を平和にしたいという壮大な提案だ。
自身の脳にある想い出を取り出し、いつでも見ることができるようにするという
一見すると、実現不可能に見えるアイディアを、
最先端の研究の文献などを調査し可能であると堂々と裏付けしていく。まさに圧巻であった。
「生きる原点」とは何か―。
それぞれに深く深く考え抜き、自分たちなりの答えを出した全7チーム。
「生きる」ことの本質にせまり、改めて「自分自身がどのように生きていきたいか」について
考えるきっかけになったのではないかと思う。
今回のミッションを通して気づいたことや感じたことが、
生徒にとって何よりの学びに繋がったであろう。
未来への大きな希望を誰もが感じるファーストステージとなった。