宇宙から地球を救え!
人工衛星を活用して”地球規模の課題”を解決せよ!
審査講評
全国から選ばれた7チームの発表に期待が高まる中、審査委員の想像を超えた
斬新なプレゼンが繰り広げられた。スカパーJSATのミッションは、地球規模の
壮大なテーマである。その解決には、宇宙や社会をはじめ人工衛星に関わる技術にまで及ぶ、
広い視野と深い探求が必要である。この課題に真摯に取り組み、全てのチームが
大きな成長を遂げて、素晴らしい成果を上げることができた。
今年のスカパーJSAT賞は、渋谷教育学園渋谷中学校の「チームKHAOS」。
質実剛健で総合力の高い、優れたプレゼンを行った。発表内容が論理的に
しっかりと組み立てられており、抜群の説得力が受賞の決め手となった。
世界64ヶ国に7,000万個も埋められているという地雷。
人の手による撤去作業を改革し、安全性と効率性、さらに継続性を高めて、
地雷問題を根本から解決しようとする力強い提案である。
人工衛星を活用した位置情報システムによる地雷原の特定や無人トラクターによる
地雷撤去など、今使える技術を巧みに組み合わせた高い実現可能性。
スカパー!の加入料から集める地雷撤去支援金をはじめ、“持続可能のトライアングル”と名付けた
持続性のある支援の仕組みで、プロジェクトを一過性では終わらせない緻密な計画。
高い調査力と論理性に満ちた提案だった。
そして、年間10万個を撤去して安全な土地を取り戻すために、「ぜひ、やりましょう!」
と自ら呼びかける声には、地球規模の課題解決への熱い思いが満ちていた。
桜丘高校の「PROGRESS」チームは、センスあふれる魅力的なアニメーションと
心のこもったナレーションで、抜きんでたパフォーマンスを発揮した。
アニメーションは600枚の画像を使った力作で、
今の時代を色濃く反映した作品に感嘆の声が上がった。
そして、3.11以降の日本が抱える課題を整理したうえで、次世代を担う
自分たちこそが持続可能なエネルギー政策を実現するのだという志の高い提案を行った。
「宇宙太陽光発電」の仕組みやそれにかかる事業コストなどを調査し、スカパーJSATが
国際的プロジェクトを推進するというダイナミックな計画をつくり上げた。
頼りにならない政治や大人の社会に対する批判精神を自分たち自身の挑戦へと
昇華させていくプロセスは、高い評価に値する。
埼玉県立鳩ヶ谷高校の「飯田商事株式会社」チームは、
「砂漠化から地球を救え」という作品で、“塩性植物”を使うという斬新な方法を提案した。
深刻な砂漠化の原因を詳しく調べる中で、塩害による砂漠化に的をしぼり、
食用のアイスプラントなどを植えることで地球温暖化と砂漠化、食糧問題を同時に
解決しようという独創性と洞察力の高い、鋭い企画を立案した。
審査委員からも「学びになった」といわれる程の高い評価を得た。
人工衛星を使った地球規模での塩分濃度測定を活用し、国境を越えた交流により、
30年かけて緑を増やしていく計画は、多くの国と地域を救う意義のある
素晴らしい提案であった。
東京都市大学等々力中学校の「おっつ@ あっつ。」は、チームワークを生かした
テンポのあるプレゼンで、世界の貧困問題に切り込んだ。
貧困地域の現状を紹介する映像を、スカパー!で無料で放送し、
視聴者からの募金を募る。スカパー!は加入料の一部を拠出し、これを支援をする。
逆に、世界の職業・仕事の紹介を紹介する映像を貧困地域の子供たちに向けて放送し、
子供たちの未来の夢へのチャレンジを支援する。
この相互交流によって、共に生き、喜び、分かち合う関係をつくるという、
愛のある提案は聴衆に大きな感銘を与えた。
また、900人にも及ぶアンケート調査は圧巻であった。
埼玉県立浦和商業高校の「ウラぱ~」チームは、パイオニア精神に則った
スケールの大きい提案が評価された。
まず、課題の決定に際してアンケートを実施し、自分たちの考えだけでなく
広い視野を手に入れた。
地球規模の課題である、地球温暖化、化石燃料の枯渇、森林の減少などの
検討から環境にやさしい無限のエネルギー源として、「宇宙太陽光発電」に着目した。
そのプロジェクトの費用を1.2兆円と見積もり、120年での回収計画を立てるなど、
常識を打ち破る大胆な取り組みが光った。
そして、この計画の成功は未知数であるとしたうえで、パイオニア精神を
失ってはいけないという強いメッセージを発信したのは見事であった。
長野県上田千曲高校の「TV戦隊 スカパーレンジャー」チームは、
地球規模で解決すべき課題として感染症を追求。その綿密な探求が際だっていた。
海面温度の上昇を人工衛星で監視・分析することで感染症の発生を予測し、
早期に予防対策をとる。
加入せずに誰でも視聴できるスカパー!の医療チャンネル(新設)で、
危機に直面する人々に迅速に情報を伝達し、携帯端末などとも連携して医療機関での
迅速な対応につなげるなどの仕組みも考案した。
人工衛星の種類や役割、感染症や医療についての広範囲にわたる調査が秀逸で、
それをもとに事業の複雑な仕組みの構築に挑んだ力作であった。
明治大学付属明治高校の「チームKumiko」は、愛すべき未来型ロボット
「スカガルー」!を提案して人気を博した。
地球規模の課題に共通するものとして「医師不足」を見いだし、
ロボットによる遠隔医療を人工衛星で実現しようという意欲作である。
人工衛星は、遠隔医療のためのロボットへの通信だけでなく、
太陽光発電で電力供給を担い、発電した電力の販売で治療の費用も賄う計画。
国境なき医師団との連携も視野に入れるなど良く練られた作品である。
ロボットはかわいいイラストで描かれ、「I’m Possible.」という
個性的なフレーズが印象に残る、聴衆を魅了した楽しいプレゼンであった。
生徒たちの日々の生活の中では、人工衛星に接する機会も、
人工衛星を意識することも極めて少ないであろう。
宇宙を周る人工衛星に思いを巡らせ、地球規模の課題に分け入っていくとき、
生徒たちが出会い、そこで目にしたものは何だったろうか。
世界には困難な課題が山のようにあり、
人類が培ってきた知恵や技術は頼りなく、心細く思えたであろうか?
それとも、世界は無限の可能性に満ちていて、
思う存分にチャレンジできる自由な空間だと予感したであろうか?
真の探求は、与えられた課題ではなく、自ら問う、その先に広がっている。
生徒たちがこのような体験を重ねて自ら成長して行くことを、心から願っている。